風に乗って来るコロポックル
かぜにのってくるコロポックル
初出:「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月分量:約48分
書き出し:一彼の名は、イレンカトム、という。公平な裁きてという意味で、昔から部落でも相当に権威ある者の子に付けられる種類の名である。従って、彼はこの名を貰うと同時に、世襲の少なからぬ財産も遺された。そして、彼の努力によって僅かでも殖《ふ》やしたそれ等の財産を、次の代の者達に間違いなく伝えることが、彼の責任であった。混りっけのない純粋なアイヌであるイレンカトムは、祖先以来の習慣に対して、何の不調和も感じる事は...