この物語をして主人公をカインに例えるのは、酷な気がします。 小作人という存在と、そこから搾り取るだけ搾り取る世の中から生まれた人間に、大きくて頑丈な体を授けたらこうなるのは必然な気もします。 もしカインの末裔というタイトルがふさわしいのならば、主人公が死ぬときに地主が死なないと割に合わないのではないでしょうか。
幽鬱な暗緑の椴松(とどまつ)帯の中に 赤子も馬も喪った 赤貧の小作人の夫婦は 踏み込んでいく。 先の見えない 逃避行である。 重厚な 完成度の高い作と感じた。
血腥い宿命が、彼らの背に重くのしかかっておる。
同じ人間だからわかる。純粋すぎる欲望と愚行。自然に支配され、時にその苛立ちを身近な弱者にぶつけようとする。綺麗事の一切通じない過酷な蝦夷のリアル。
自業自得とは言え、これでもか、これでもかと言うように、起こる不運、不幸。悲惨で過酷な人生。ぼろ布のようになり、二人きりで途方も無く北海道の厳冬の雪道を歩いて行く姿に哀れみを感じる一方、雑草のような、そして無知故の生命力も感じる。
ここまでは 酷くはなかったが よく似た光景は想像できる。人間はそれでも活きる力を持つもののだ。 仁右衛門の生きざまと妻の仕える心情や思いやられる。 過酷な自然と薄情な人間の描写は 不思議と彼の暴虐な行為に優しさと同情を感じたのは 私一人か。
読みにくかった。
明治、大正時代の農家の小作人の生活。悲劇が 描かれています。 主人公の子供時代は、描かれていないけど 、もっと凄まじいものだっただろうと 想像しました。 あらゆる職業、様々な場所で 悲劇が 繰り返されていた 時代だと思いました。 しかし、かたちは違っても 現代にも おこっている普遍的な問題でも あると。