「アンドレアス・タアマイエルが遺書」の感想
アンドレアス・タアマイエルが遺書
アンドレアス・タアマイエルがいしょ
初出:「明星 申歳一」1908(明治41)年1月1日

森鴎外

分量:約15
書き出し:小生は如何にしても今日《こんにち》以後生きながらへ居ること難く候。何故と申すに小生生きながらへ居る限りは、世間の人|嘲《あざけ》り笑ひ申すべく、誰一人事実の真相を認めくるる者は有之《これある》まじく候。仮令《たとひ》世間にては何と申し候とも、妻が貞操を守り居たりしことは小生の確信する所に有之、小生は死を以て之を証明する考に候。今日まで種々の書籍に就て、此困難なる、又|疑団《ぎだん》多き事件に就き取...
更新日: 2019/10/24
19双之川喜41さんの感想

 死をもって 抗議するということの意義は 何処にあるか。 確かに 白人夫婦の間に 黒人の赤子が生まれることは 妄想を逞しくせずとも 結論を得やすい。 夫の選択肢が 他に無かったのが痛いと感じた。

更新日: 2016/05/11
3e9c4b240bacさんの感想

遺書です。候文で読みにくいですが。 以下、内容。 新妻が黒人種の子供を産み落とした。 夫は(白人でありながら)我が子であることを信じている。 なぜというに、過去の様々な口伝や文献で、「妊婦が妊娠中に見た何か印象的なものの外見が、新生児に遺伝される」ことが報告されているからだ。 事実、妻は動物園で黒人に囲まれ、恐ろしい目に遭ったと言っていたではないか。 そのときの強烈な印象が胎児の相貌を黒人のようにしてしまったのだ。 しかし世間の人々は私と、妻と、私の子に後ろ指をさし、影で嘲笑している。 私は上記の文献を提示したいところだが、もはや何を言ったところで世間は私を笑い者にするだろう。狂人である、と。 それならば私は死ぬしかない。私の死を以て私が狂人でないことの証明、妻の名誉の回復を期するものである。 さらば、愛しい妻よ我が子よ。 …。という内容です。 まぁ、奥さん間違いなくやられちゃってるよね 夫も半分は解ってて、この遺書かいたんでは? 半分は世間、もう半分は妻への、報復というか。そんなふうに思いましたね。