「江戸川乱歩氏に対する私の感想」の感想
江戸川乱歩氏に対する私の感想
えどがわらんぽしにたいするわたしのかんそう

夢野久作

分量:約16
書き出し:江戸川乱歩氏に「久作論」を頼んだから、私はそれに対する「乱歩論」を書けという註文が猟奇社から来ました。私はとりあえずドキンとしましたが、あとから直ぐに「これは書けない」と思いました。乱歩氏は私の未見の恩人の一人なのです。乱歩氏はズット前に、私が生れて初めて書いた懸賞探偵小説を闇から闇に葬るべく、思う存分にコキ下《おろ》されました。又、一昨年、私が或る老婦人の手記を中心にした創作を書いた時には口を極...
更新日: 2016/07/19
さんの感想

乱歩氏を、褒めちぎらず批評を加えているところが、本当に乱歩氏を敬っているのだと思う。普通、尊敬する人の事を書くのであれば、終始称賛の意を書き記すであろう。しかし、それは本当の敬意には、なっていないのだ。 もし、一から十まで褒めてしまうとそれは、ただの自分で作った虚像に縋っているだけなのである。 虚像だけを愛していては、人の真髄にはたどり着けない。 だから、夢野さんはあえて、乱歩氏の批評を加えることで改めて称賛の意を示しているのだと思う。 それにしても、あの夢野さんに憧れられている乱歩氏が羨ましいなぁ……

更新日: 2015/07/09
3544aa66841eさんの感想

批評ではなく短編小説。感情の機微を感じながら、一種の緊張感さえ感じる「乱歩論」でした。自己を卑下する著者の内心とは裏腹に、攻撃的なスタイルを垣間見せる。「乱歩」は「乱歩」「私」は「私」そのような陰鬱でありながら、溌剌とした文面に夢野久作の真実染みた姿を発見しました。