横光利一
判事は 我ながら手際の良いと思われる誘導尋問で 通行人を 死に至らせた踏み切り番を 自分は わざとやったかもしれないと思わせるのに 成功したような 気がした。 一晩 考えてみて やはり 階級闘争なるものには 無縁と思い 無罪に するべきとの 結論をえた。 鳥の眼で 観ることの 不自然さに 思い至ったのは 上出来と感じた。