地図にない島
ちずにないしま
初出:「ユーモアクラブ」1939(昭和14)年10月分量:約33分
書き出し:一痛いばかりに澄み切った青空に、赤|蜻蛉《とんぼ》がすーい、すーいと飛んでいた。「もう終りだね、夏も——」中野五郎は、顔馴染になった監視員の、葦簾《よしず》張りのなかに入りながら呟いた。「まったく。もうこの商売ともお別れですよ……」真黒に陽にやけた監視員の圭さんが、望遠鏡の筒先きに止まっている赤蜻蛉を、視線のない眼で見ていた。夏の王座を誇っていたこのK海水浴場も、赤蜻蛉がすいすい現れて来ると、思い...