彼女の待つものは何なのか。 ヒーロー?平和?希望? 同じように待つ人が現代にも居るかのようで興味深い
太宰治らしいというか。 でも、春のようなものを待つというのは、あたたかくて、うつくしくて、良いな。
少女の抱える虚無感と、戦時の世間との隔絶がいやに現代的で引き込まれました。目的を持って忙しく行き交う世間様を前に、具体的で正体のわからない何かを求めてしまう気持ちは共感できます。大戦を前に、誰も何かを背負わされ、がむしゃらに生きていた訳では無いのでしょう。
チョット理解できませんでした。
20歳という思春期の少女の、複雑に絡まる感情を、一つの文章で完璧にまとめてくれたような印象を受けた。 太宰にはやっぱり頭が下がる。 “駅前”で人々がそれぞれに散らばってゆく描写は、まさに今の社会にも通じていてどきりとした。 それを見ている主人公の“待っている”という心の描写も見事。 誰か、いや、何かを“待っている”けど、来た時のことを考えると“怖い”と思ってしまう。その逃げ場のなさは、誰もがわかる感情であると信じる。 そうして何もできない自分をいやらしい存在だと、疎ましく思う。 人間味と言おうか、春のようにあたたかく、でも、それだけではあってはならぬ。やっぱりそんなものを、今日もわたしは待っている。
対人恐怖症の 独り言と斬って捨てるのは容易であるけど 大戦争のさなか 千々に乱れる心境が 巧みに 描き出されている。 何やら 薄衣につつまれた 静かな反戦のようでもあり 感嘆する。
なんなんだ、この深さは…!
紹介されて読んだ話でしたが、読み終えた時にキラキラしたものが残りました。 彼女が待っているものは形も正解もなく分からないもやもやした何かだけれど、読者には訪れているだろう未来や平和なのかなと。
お告げを待つこと
六男は ろくなことを 考えず だけどなんだか 気持ちはわかる
彼女が待っている対象が人とは限らない。平和だとしたら。きっと、 彼女なりの行動、当時のことを想像すると家でじぃ〜っとはしていられなかった。
太宰治が何を言いたかったは正直よく分からなかったけど、きっと戦争の真っ只中何も出来ずにいる自分をどこか違う世界に連れだしてくれるきっかけを待っていたのかなと思いました。 私も特別な何かが起きることを期待して、ぼっと曖昧な何かを待っていることがあるなと共感しました。この息詰まった日常をぱっと明るい何かが変えてくれないかな~笑
彼女の精神状態は異常なのか? きっかけは、「大戦争(3回も登場)」からだ。 戦争がきっかけなら、「待つ」ものは一つしかない。 平和だ!彼女だけではないはずだ。日本国民全員が待ち望んでいるものだ! ただ、彼女のみならず、誰一人、口に出せないのだ。 だから、彼女は一体何を待っているのか分からなくなってしまった。平和を希求すること自体が怖く恐ろしく、ましてや、遠方の地で兵隊さんがお国の為に戦っている、それなのに、破廉恥な期待も抱いてしまう。 善人のなかに、潜在する悪心。 表現の自由が統制されてた戦時下、誰もが、只「待つ」事しか許されなかった、と解釈した。
誰かと約束している気になりたい。
ただ駅のベンチに座り行き交う人の流れを眺める、ぼんやりした時間のなかに彼女の待ち続ける何かがあるのかもしれない。実際それを信じて彼女は待ち続けているわけなのだが。その何かは誰にもわかりそうでわからない。きっと戯曲のような人生の中で、苦し紛れの芝居をしながら誰もがもがき探し続けるのだろう。
すべて自分の個人的推量ですが、 人が誰でも一度は思う、出処が分からない深層心理の不安を書いているのではないだろうかと思いました。 特に、 大戦争が起こった時には めちゃばり働きたい、お役に立ちたい、というのは口だけの嘘で、 という所は、 誰だってそりゃ休みたいですよね。 そういう、(聞こえは悪いですが) 人間誰でも思ってしまう偽善心のようなものを表しているのではないかと。 何て言うんでしょう、物言わぬ多数派の中で、自分を見失ってしまっている感じも、個人的には読み取れました。
すぐ読めるもので選んだだけでしたが、これを選んで読んでみてよかったです。 時代は違うのに、人との挨拶って同じようなもので、きっと私だけでなく共感する人も多いだろうと思います。 文体は独り言のようで、読みやすかったです。 最後まで読んだけど、これは太宰治本人のような、そんな想像をしてしまうお話でした。
心のなかの独り言のようでもありながらも、ひとつのメッセージ性を感じる短編小説。
初めのうちは「私」=「太宰」と思っていたが、「私」とは二十歳の女であった。 大戦争に対する漠然とした暗さを憂いているのか?もっと内的な自己の事なのか?もし、自己のことであるならば、「私」は「二十歳の女」である必要がない。しかしながら、太宰治にはその心の内に「女性」を飼っているように思える作家だ。不思議な、謎な、作品である。
文章が素敵でした。