花物語
はなものがたり
初出:「ホトトギス」1908(明治41)年10月分量:約29分
書き出し:一昼顔いくつぐらいの時であったかたしかには覚えぬが、自分が小さい時の事である。宅《うち》の前を流れている濁った堀川《ほりかわ》に沿うて半町ぐらい上ると川は左に折れて旧城のすその茂みに分け入る。その城に向こうたこちらの岸に広いあき地があった。維新前には藩の調練場であったのが、そのころは県庁の所属になったままで荒れ地になっていた。一面の砂地に雑草が所まだらにおい茂りところどころ昼顔が咲いていた。近辺の...