「物理学と感覚」の感想
物理学と感覚
ぶつりがくとかんかく
初出:「東洋学芸雑誌」1917(大正6)年11月

寺田寅彦

分量:約20
書き出し:人間がその周囲の自然界の事物に対する知識経験の基になる材料は、いずれも直接間接に吾人の五感を通じて供給されるものである。生まれつき盲目で視神経の能力を欠いた人間には色という言葉はなんらの意味を持たない、物体の性質から色という観念をぬき出して考える事がどうしてもできない。トルストイのおとぎ話に牛乳の白色という観念を盲者に理解させようとしてむだ骨折りをする話がある。雪のようだと言えばそんなに冷たいかと...
更新日: 2018/02/05
sitfさんの感想

物理学(というよりも、これを引っ括めた全ての学問)は元々は人間の感覚とその繰り返しによって培った経験を客観的視点から思考し、抽象かつ一般的にまとめているものである。量子論や相対性理論等の人間の五感とは離れた物理理論が出てきているにせよ、やはり物理学は完全に非人間的なものというわけではなく、'感覚'というものを大事にしていくべきであり、必要以上に人間観を消去してしまうのは寧ろ極端な人間主義かつ自然に対する冒涜ではないかと説いている。 今の学問の流れに流されるあまりに、自然に対する古代からの人間の精神を忘れてはならないということだろうか。現在に迫られるにつれて、過去を忘却することが多々あるように思う。学問だけでなく、何事においても心に留めておくべきことだと感じた。