想像力を掻き立てる作品だった。3通の手紙とタイトルのアイデアも面白く、無駄のないこの短さがとてもよい。考え過ぎず、自由に感じたらよいと思う作品。
3通の書置き、1つは兄弟が自殺する、2つ目は兄弟で過ちを犯したからころしてくれと3つ目は単純に助けてというもの。2つ目に一番ページ数を割いている。作者の書きたい事、読者の読みたいところはそこである。1と3は2を際立たせるものであろう。
時系列から論理的な整合性が無いためラストは二通りの解釈可能との研究者の由良氏の説が定番(+単に著者の創作上のミス説。夢野作品はこの手のミスが晩年に至るまでジャンルを問わず非常に多い)。 結果的に、解釈を読者に委ねたところまでがこの作品の最大の魅力。 ちなみに私の解釈は…
天国のような島で、地獄のような想いに焼かれるなんて面白いなと思った。実際に過ちを犯してしまったのかどうかは定かではないが、犯していないにしても、その考えだけで敬虔な二人には罪深く、耐え難いものであったのではないかと思う。なんだかアダムとイブのようだと思った。 夢野久作の作品のなかでは比較的読みやすくて嬉しい。
やってか やらずか 妄想を 自ら罰したのか 自死 相対死の原因は 誰にも解らない。 救助費用も バカにならない。 助けを目前に そんなことするなんて。 感激して 耽美 運命なんて言い出す勘違いの輩が 気の毒。 出鱈目なルビの振り方も 不愉快地獄と感じた。
個人的には3番目の手紙が最後に書かれた手紙って解釈しました 私個人の意見だけど、3番目は子供らしい手紙っていうより狂気?を少し感じてしまって笑 だから、お兄ちゃんが我慢できなくて妹としてしまった罪から精神がおかしくなって3番目みたいな手紙を書いたのかなって思ってしまった でもほんとに人によって解釈が色々変わる作品で凄いなと思いました
そう来るか…と笑 最初に読んだ時は「????」って感じだったけれど、読み返して、時系列を辿ると納得する。 この人にとっては、まさに地獄だったのだなぁ…。
矛盾が多々あり(おそらく夢野は正しい答えを用意していないので)読む人の数解釈が有る小説だと思う。夢野の中では短く読みやすいのでオススメ。
矛盾点が多すぎるが全体通して近親相姦という物が見えてくる…が… 狙って書かれた矛盾点なのか話の綻びなのかわからない物が色んな所に散りばめられているので難しい。 難しく考え過ぎなのかもしれない。 ドグラ・マグラのように多少の矛盾する部分は飛ばして全体のテーマを読み取るほうが良いのかも?
この2人は純潔のままだったの?
兄妹 聖書 夢野久作の得意分野、凄みのある書簡体の作品 好きな人は好きそうなテーマだが私にはピンと来なかった
はたして自分がこういう状況に陥ったらどうするだろうか、と考えた。
とても綺麗な世界観です。
まるで、旧約聖書に出てくるアダムとエバのようだと思いました。 流れ着いた漂流先が、まるで天国のように美しい場所で、食べるものにも何にも苦労はしない環境なのに、次第に表現しようのない愛の苦しみにさいなまれる二人の様子やその思いが、透明度の高い文章の中に浮き沈みしていて、心臓をぎゅっと掴まれたような思いがしました。 とても純粋で、どこか薄気味悪くて、間違っているように見えるのに、正当化するのが正しいようにも思えてしまう。いろんな感情が渦巻いて、こわいくらいなのに、なぜかその感情の波を心地よく感じてしまう。まるで、浅い夢を見ているような錯覚すら覚えます。 こんなにも、頭がぐちゃぐちゃになってしまった作品は初めてです。 面白いというよりかは、興味深いという感じですね。 いろんな人の感想が聞きたくなります。
単純に考えれば 手紙の配列は3→2→1となるのだろう。 短編ながらにして、兄弟の不義を如実に描いた描写はあえて露骨な描写を避けることで読者の好奇を駆り立てている。 果たして太郎にとってのアヤコは彼の救世に足り得たのだろうか。
少しヒヤッとした 何十年たった今でも新鮮さを感じさせる作品
これが夢野久作です、と見せつけんばかりの力強い作品ではないだろうか。 ドグラマグラがとにかく有名な作者だが、読めない人にはとりあえず瓶詰地獄読めばどういう作家かわかるとすら言える。聖書を拠り所とし、自我を保とうとする兄弟に、人間の生存本能が芽生え始め、聖書を燃やすことで崩壊していく天国という名の自我。 最後の親に宛てた手紙の不気味さ、文体から溢れ出る夢野久作の力強さは、短編だというのに恐ろしいほどに、鮮烈きわまりない。 というのは話の感想。何よりこの作品が優れている点、話の順序を逆転させより深いダメージを読者に与えることに成功している。えんぴつはどうしたんだよという謎もあるが… (文章の力強さというのを感じたのは私の中で今現在、この瓶詰地獄、川上未映子の乳と卵、小川一水の漂った男です。もし同じような感想の方がいれば手にとって頂ければ同じ読書家として嬉しく思います)
夢野久作の世界観を比較的短文で、しかし濃厚に知るのに適したお話だと思います。 このお話を構成している3つの手紙には矛盾が幾つかあり、それが読者の想像を掻き立てます。 そもそも3つの手紙はどの順に書かれたのか、兄妹はどのような罪を犯したのか、助けに来たと思われる船を目前に、何故あれだけの量の文章(遺言)を書き残せたのか…。 そして第3の手紙(恐らく最初に書いた手紙)が、一気に読者を何とも言えぬ恐ろしさに陥れます。 手紙の矛盾や難解な言葉遣いは、一見物語の欠陥の様に思えますが、聖書だけを頼りに成長した兄妹の背景等を考え、敢えてその様にしたのだと思うと、作者の緻密な計算に圧倒するばかりです。
耽美というのに相応しい美しさ 美しく、 健やかな島で、 聖書を心の拠り所にして ただただ真っ直ぐに育っていく二人 まるで天国のようと思えていた生活が いつの間にか狂っていく 誰も、何も悪いものはない それは二人の運命なのだから 美しく、甘酸っぱく、苦しい 徐々に首に手をかけられていくような作品
夢野久作の作品で一番読みやすかった。スラスラと先へ先へと進める軽やかさで良かった。 自分的名言 ああ。お父様。お母様。すみません。すみません、すみません、すみません。私たちは初めから、あなた方の愛子(いとしご)でなかったと思って諦らめて下さいませ。 その中から、私とおんなじ苦しみに囚われているアヤ子の、なやましい瞳(め)が、神様のような悲しみと悪魔のようなホホエミとを別々に籠(こ)めて、いつまでもいつまでも私を、ジイッと見つめているのです。