海に対する気持ちのあと、赤痢、駆逐艦の話へと。こんな事態の夜の描写。景色がありありと目に浮かんできます。
著者は 海を 愛するなら 一切は 水平線を 滑り落ちた場所にあるという。視界の中の 暗礁(あんしょう)では 駆逐艦が 座礁し 島の海女達が 潜って 遭難者を 助け揚げ しっかりと 抱きしめて 暖を 取らせたようなことが あったという。対比させた 詩情が 効果的だと 感じた。
「われわれが海を愛し、空想を愛すというのなら一切はその水平線の彼方にある」という一文にホオ……となり、何度もそれを読み返したが、この文章全体が言いたいのはそれではなかった。全く、違う性質の海のことについてだった。すごく良かった。
ほのぼのとした懐かしき思い出とともに、恐ろしい病や災害の記憶も、おなじ海というものからしんみりと印象づけられる。 語り手のなみなみならぬ海への想いの深さに言葉を失うような良作。