「海」の感想
うみ

梶井基次郎

分量:約6
書き出し:……らすほどそのなかから赤や青や朽葉《くちば》の色が湧いて来る。今にもその岸にある温泉や港町がメダイヨンのなかに彫り込まれた風景のように見えて来るのじゃないかと思うくらいだ。海の静かさは山から来る。町の後ろの山へ廻った陽がその影を徐々に海へ拡げてゆく。町も磯も今は休息のなかにある。その色はだんだん遠く海を染め分けてゆく。沖へ出てゆく漁船がその影の領分のなかから、日向のなかへ出て行くのをじっと待って...
更新日: 2025/04/16
猫のにゃんたろうさんの感想

海に対する気持ちのあと、赤痢、駆逐艦の話へと。こんな事態の夜の描写。景色がありありと目に浮かんできます。

更新日: 2024/04/11
19双之川喜41さんの感想

 著者は 海を 愛するなら 一切は 水平線を 滑り落ちた場所にあるという。視界の中の 暗礁(あんしょう)では 駆逐艦が 座礁し 島の海女達が 潜って 遭難者を 助け揚げ しっかりと 抱きしめて 暖を 取らせたようなことが あったという。対比させた 詩情が 効果的だと 感じた。

更新日: 2020/11/01
yopparariさんの感想

「われわれが海を愛し、空想を愛すというのなら一切はその水平線の彼方にある」という一文にホオ……となり、何度もそれを読み返したが、この文章全体が言いたいのはそれではなかった。全く、違う性質の海のことについてだった。すごく良かった。

更新日: 2018/12/03
びたちょこさんの感想

ほのぼのとした懐かしき思い出とともに、恐ろしい病や災害の記憶も、おなじ海というものからしんみりと印象づけられる。 語り手のなみなみならぬ海への想いの深さに言葉を失うような良作。