巖谷小波門下の作家である著者が、明治に残る江戸の風俗や習慣を列挙してまとめたエッセイ集的な作品。 本作が世に出たのは1911年で、慶応以前の江戸生まれの人々もまだ多くが現役で活動していたと考えられ、作中に登場する習慣もほぼ江戸そのままの形と見て良いだろう。 著者の柴田流星は明治生まれだが江戸の下町(現:東京都文京区)出身であり、江戸っ子の心意気を度々説いている。 東京が近代都市として発展するのは結構だが、昔ながらの江戸っ子気質も皆忘れずにいて欲しいという思いが伝わる。 さて、今の東京都民にその心意気はあるだろうか?