尾生の魂を宿した人間。いろいろと繊細すぎて何回か読み返した作品。
尾生の魂を宿した芥川、その魂を受け継いでいる読者が今もどこかにいるのだろう。無為に何かを待っている誰かが。
一人の男がすがるように、あるいは意地で信じた約束と顛末。男の人生に想像力がかきたてられる。 オチはくすっとした笑いと清々しさを感じた。
「何一つ意味のある仕事ができない」 芥川の焦燥(しょうそう)は 幾千年の漂泊した魂から始まる。 一体 蟹の穴に 波のあたる音が 聴こえるものだろうか。 繊細さは つらいものだと感じた。
芥川の壮大な言い訳 (17)
良いアイデアを女性、良いアイデアを思案する自分のことを、来るかも分からないその女性を待ち続ける男性に例えている。 芥川龍之介はその女性に会うため、常人よりも、多くの自分の人生の時間を、待ち続けることに費やした人だったのだろう。
感じ方によっては迫力を感じると思います。どの場面も心に残りますよ。でも、終わり方がビミョーです。
夜半に海へ流れる尾生の死骸、月の光に誘われぼんやりと昇天していく尾生の魂の場面が美しくて一等心に残ったいます。女はまだ来ない。尾生は最後まで信じていたんだなあ。前世が今生に影響しているのだという主張が興味深かった。