寺田寅彦
雙喜 寅彦が 小学生の頃 鳥屋の息子が 文具をくれたら 代わりに 鷹をやるという話しを 真に受けて あろうことか 文具を 先に 渡してしまった。麻薬取引だって 物と金とは 同時に渡すのが 暗黒業界の 仁義ときく。同時履行の 原則は 覚えておいたほうが いいかもしれない。相手は もっともらしい 言い訳を 繰り出して 鷹を 差し出すことは なかった。この経験から 寺田は 長じてからは 注意深く なったわけではないのらしいので むしろ 彼の 上質の 人柄が しのばれて 面白いと感じた。