「銀座アルプス」の感想
銀座アルプス
ぎんざアルプス
初出:「中央公論」1933(昭和8)年2月

寺田寅彦

分量:約35
書き出し:幼時の記憶の闇《やみ》の中に、ところどころぽうっと明るく照らし出されて、たとえば映画の一断片のように、そこだけはきわめてはっきりしていながら、その前後が全く消えてしまった、そういう部分がいくつか保存されて残っている。そういう夢幻のような映像の中に現われた自分の幼時の姿を現実のこの自分と直接に結びつけて考えることは存外むつかしい。それは自分のようでもあり、そうでないようでもある。自分と密接な関係のあ...
更新日: 2022/05/27
cdd6f53e9284さんの感想

幼い頃に見た夜の銀座の輝きと、学生時代に見た銀座の賑わい、そして、壮年になってからの銀座の街、鮮明な思い出の中で語られる魅力ある店々が語られたあとで、寺田寅彦は、銀座をアルプスに例えてこう言う。 ❮自分もせいぜい長生きする覚悟で若い者に負けないように銀座アルプスの渓谷をよじ登ることにしたほうがよいかもしれない。そうして70歳にでもなったら···❯と、続けている。 この随筆が掲載されたのは、昭和8年2月の「中央公論」、寅彦55歳のときだ。 文中では、「70歳にでもなったら」と将来の希望を書いているのだが、その2年後、57歳にして他界した。 少し先のことなど誰にも分かりはしないのだ。 こういう随筆を読むと胸が締め付けられる思いがする。 まあ、せめてもの慰めは、暗黒時代を見ずに済んだというくらいか。

更新日: 2020/12/09
19双之川喜41さんの感想

 銀座のデパートの群れを アルプスに見立てて  その頂上に  震災の 準備を喚起する  大看板を建てよう と言う随筆である 鉄道馬車が 地下鉄に変わる頃の 話であるから  今でも馴染みのある 店名も ちらほら出てくるけど 時の流れは恐ろしいもので  言われても全く 分からない ものもある。