落第
らくだい
初出:「中学文芸」1906(明治39)年9月15日分量:約12分
書き出し:其頃東京には中学と云うものが一つしか無かった。学校の名もよくは覚えて居ないが、今の高等商業の横|辺《あた》りに在《あ》って、僕の入ったのは十二三の頃か知ら。何でも今の中学生などよりは余程《よほど》小さかった様な気がする。学校は正則と変則とに別れて居て、正則の方は一般の普通学をやり、変則の方では英語を重《おも》にやった。其頃変則の方には今度京都の文科大学の学長になった狩野だの、岡田良平なども居って、...