富嶽百景
ふがくひゃっけい
初出:「文体」1939(昭和14)年2、3月分量:約39分
書き出し:富士の頂角、広重《ひろしげ》の富士は八十五度、文晁《ぶんてう》の富士も八十四度くらゐ、けれども、陸軍の実測図によつて東西及南北に断面図を作つてみると、東西縦断は頂角、百二十四度となり、南北は百十七度である。広重、文晁に限らず、たいていの絵の富士は、鋭角である。いただきが、細く、高く、華奢《きやしや》である。北斎にいたつては、その頂角、ほとんど三十度くらゐ、エッフェル鉄塔のやうな富士をさへ描いてゐる...