「愛怨峡」における映画的表現の問題
「あいえんきょう」におけるえいがてきひょうげんのもんだい
初出:「帝国大学新聞」1937(昭和12)年6月28日号分量:約5分
書き出し:「愛怨峡」では、物語の筋のありふれた運びかたについては云わず、そのありきたりの筋を、溝口健二がどんな風に肉づけし、描いて行ったかを観るべきなのだろう。私は面白くこの映画を見た。溝口という監督の熱心さ、心くばり、感覚の方向というものがこの作品には充実して盛られている。信州地方の風景的生活的特色、東京の裏町の生活気分を、対比してそれぞれを特徴において描こうとしているところ、又、主人公おふみの生きる姿の...