生爪を剥ぐ
なまづめをはぐ
初出:「不同調」1927(昭和2)年1月号分量:約10分
書き出し:夏の夜の、払暁に間もない三時頃であった。星は空一杯で輝いていた。寝苦しい、麹室のようなムンムンする、プロレタリアの群居街でも、すっかりシーンと眠っていた。その時刻には、誰だって眠っていなければならない筈であった。若し、そんな時分に眠っていない者があるなら、それは決して健康な者ではない。又、健康なものでも、健康を失うに違いない。だが、その(時刻)は眠る時刻であったが、(時代)は健康を失っていた。プロ...