「戦話」の感想
戦話
せんわ

岩野泡鳴

分量:約27
書き出し:十年振りの会飲に、友人と僕とは気持ちよく酔った。戦争の時も出征して負傷したとは聴いていたが、会う機会を得なかったので、ようよう僕の方から、今度旅行の途次に、訪ねて行ったのだ。話がはずんで出征当時のことになった。「今の僕なら、君」と少し多言になって来た。友人は、酒のなみなみつげてる猪口を右の手に持ったがまた、そのままおろしてしまった。「今の僕なら、どうせ、役場の書記ぐらいで満足しとるのやもの、徴兵の...
更新日: 2023/10/04
00813f8b221dさんの感想

日露戦争に従軍し、左手を失って帰還した友人が主人公に戦争の思い出話を聞かせる文字通りの「戦話」。 友人が忘れもしないと語る明治37(1904)年8月20日は日本軍による第一次旅順総攻撃が行われた日であり、想像を絶する激戦の様子が生々しい。 他方、友人は日々の苦しい生活に汲々とするくらいなら、いっそあのまま戦死していた方が…とも零しており、単純に「生きて日本に帰って来れて良かったね」では済まないところに本作の味わいがある。