岩野泡鳴
日露戦争に従軍し、左手を失って帰還した友人が主人公に戦争の思い出話を聞かせる文字通りの「戦話」。 友人が忘れもしないと語る明治37(1904)年8月20日は日本軍による第一次旅順総攻撃が行われた日であり、想像を絶する激戦の様子が生々しい。 他方、友人は日々の苦しい生活に汲々とするくらいなら、いっそあのまま戦死していた方が…とも零しており、単純に「生きて日本に帰って来れて良かったね」では済まないところに本作の味わいがある。