貧乏一期、二期、三期
びんぼういっき、にき、さんき
わが落魄の記
わがらくはくのき分量:約14分
書き出し:第一期僕は、僕の母の胎内にゐるとき、お臍《へそ》の穴から、僕の生れる家《うち》の中を、覗いてみて、「こいつは、いけねえ」と、思つた。頭の禿げかゝつた親爺と、それに相当した婆《ばゝ》とが、薄暗くつて、小汚く、恐ろしく小さい家の中に、坐つてゐるのである。だが、神様から、こゝへ生れて出ろと、云はれたのだから、「仕方がねえや」と、覚悟をしたが、その時から、貧乏には慣れてゐる。僕の母親は東京にゐるが、父は、...