大菩薩峠
だいぼさつとうげ
02 鈴鹿山の巻
02 すずかやまのまき初出:「都新聞」1913(大正2)年12月19日~翌年9月3日分量:約104分
書き出し:一「浜《はま》、雪は積ったか」炬燵《こたつ》に仮睡《かりね》していた机竜之助は、ふと眼をあいてだるそうな声。「はい、さっきから少しもやまず、ごらんなされ、五寸も積りました」「うむ……だいぶ大きなのが降り出した」「大きなのが降ると、ほどなくやむと申します」「この分ではなかなかやみそうもない、今日一日降りつづくであろう」「降っているうちは見事でありますが、降ったあとの道が困りますなあ」「あとが悪い——...