七宝の柱
しっぽうのはしら
初出:「人間」1917(大正6)年3月分量:約32分
書き出し:山吹《やまぶき》つつじが盛《さかり》だのに、その日の寒さは、俥《くるま》の上で幾度も外套の袖《そで》をひしひしと引合《ひきあわ》せた。夏草《なつくさ》やつわものどもが、という芭蕉《ばしょう》の碑が古塚《ふるづか》の上に立って、そのうしろに藤原氏《ふじわらし》三代栄華の時、竜頭《りゅうず》の船を泛《うか》べ、管絃《かんげん》の袖を飜《ひるがえ》し、みめよき女たちが紅《くれない》の袴《はかま》で渡った...