「外套」の感想
外套
がいとう

ゴーゴリニコライ

分量:約94
書き出し:ある省のある局に……しかし何局とはっきり言わないほうがいいだろう。おしなべて官房とか連隊とか事務局とか、一口にいえば、あらゆる役人階級ほど怒りっぽいものはないからである。今日では総じて自分一個が侮辱されても、なんぞやその社会全体が侮辱されでもしたように思いこむ癖がある。つい最近にも、どこの市だったかしかとは覚えていないが、さる警察署長から上申書が提出されて、その中には、国家の威令が危殆《きたい》に...
更新日: 2021/07/03
いちにいさんの感想

一番下の娘が、この本を読める年齢になった。同じ感動は分かち合えるだろうか? 何回も読める。 読み物がなくなると、というか良書に巡り会えないと、ここに戻ってしまう。 好きな書物は? という問いには、この「外套」を挙げる。 愛読書である。500回以上読んでいる。 「鼻」や「死せる魂」あるいは「検察官」では駄目だ! ゴーゴリでなく、「外套」なのだ。 愛も恋も無い。まして結婚という縁も無い。出世も無い。平凡な写字の仕事が主人公の人生なのだ。運命はそんな人間にも悲劇を用意している、というのが哲学的である。農奴解放とかの時代背景は別として、日本人、特にサラリーマンに最適の書だと確信する。 アカーキィ アカキエウィッチ バシマチキンのこの物語は永遠に続く。彼が新調した外套を奪ったのは、実は亡霊なのだ。バシマチキンは哀しいかな、やがて間もなく息を引き取り幽霊になって現れ、街中の役人の外套を奪う。あの彼の外套を奪った亡霊の如く。あの亡霊もどこぞの亡霊に自分の外套を奪われたに相違ない。だから、バシマチキンに外套を奪われたかの有力者も、今度は亡霊となって誰かの外套を盗むことになる。こうして当時にロシア階級社会に暮らす人々の運命は永遠に続くのである。

更新日: 2019/03/27
8e46b5bc1c6aさんの感想

主人公に憐憫の情。実際、こういった出来事が多かったでしょう。追い剥ぎ。亡霊になって外套を奪う。もうそういった手段しか報復がなかった。有力者の叱責には怒りを感じる。言葉の暴力。後で後悔とか言っても赦せないなぁ。

更新日: 2016/09/10
451fd4e3df05さんの感想

この実直で不器用、朴訥な主人公 アカーキイ ・アカーキエウィッチは、 思いもよらず外套を新調する事になり日常の歯車が狂い始める サンクトペテルブルクの陰鬱な空のような不条理が その外套に重く垂れ込めるのだ その外套は、人の世という毒と生きざまという湿気をたっぷり含み 1つの人格を形成していく… チェーホフよりゴーゴリ 人生を達観したかのようなファンタジスタに賞賛を

更新日: 2016/02/11
まきむらさんの感想

昔よく見たモノクロのロシア映画を思い出すような、報われてはいない筈なのに後味はそう悪くなかった 世の中、巡りが悪いときはとことん悪いよね…

更新日: 2016/02/07
7b24beb875ccさんの感想

未だに、この作品を超えた小説を読んだことがない。あまり若い時この小説を読まない方が良い。いや読んではならない。なぜなら、何を読んでもつまらない。虚しい!そしてまた「外套」に戻ってしまう。300回以上は読んだと思う。