ああ玉杯に花うけて
ああぎょくはいにはなうけて
初出:「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号分量:約344分
書き出し:一豆腐屋《とうふや》のチビ公はいまたんぼのあぜを伝ってつぎの町へ急ぎつつある。さわやかな春の朝日が森をはなれて黄金《こがね》の光の雨を緑の麦畑に、黄色な菜畑に、げんげさくくれないの田に降らす、あぜの草は夜露からめざめて軽やかに頭を上げる、すみれは薄紫《うすむらさき》の扉《と》を開き、たんぽぽはオレンジ色の冠《かんむり》をささげる。堰《せき》の水はちょろちょろ音立てて田へ落ちると、かえるはこれからな...