実は自分も現役の頃に、原稿取りなるものをしていたことがあります。 ここに書かれているとおり、だいたいこんな感じだったのですが、依頼する先生がこの芥川龍之介みたいな甘ちゃんなら編集者は大いに助かります。 しかし、先生方は皆さん一家言を持った偉い人ばかりですから(もちろん、一番偉いと思っているのは、本人自身です)、なかなかこうはいきません。 一番つらいのは、自分の担当者がどれだけ自分の著作を読んでいるか試すようなレアな質問をしてくることと、それの正直な感想を求めてくることです。 もちろん、みえみえの迎合はいけません、嫌がられますし、いきすぎると担当を外された余勢をかって、失職の虞れさえ生じてきます。 その著者の作品を読んでおくことは最低条件としても、併せて「世評」にも目配りしておきます。 もし、著者が、自分の著作の感想を求めてきた場合は、この「世評(できればネガティブなもの)」をうまく使います、 否定されている理由が自分にはどうしても解せない、ここが一番好きなのに、とかなんとか見当違いの弁護をする、いわゆる恋は盲目的感想がつたわればOK 、お前と俺以外のほかの連中はすべて敵だみたいな繋がりができれば、第一段階通過です。 芥川龍之介は年中こんな目にあっていたんでしょうね。可哀想
平たく言えば 饅頭(まんじゅう)を拵えて売りさばくのと 大差はないわけあり 押し問答を 文章にする ということで 手を打ちとなる。 芥川自身も なんとなく 気恥ずかしかったらしく バルザックの足湯なるものを 持ち出して 照れ隠しとしていると感じた。