南関東大地震の時に活躍されていた文豪の震災記は、数編ある。本作品は、著者の被災時の心理、被災後の心理が読み取れて、面白いと感じています。特に、震災後の朝鮮人や社会主義者による暴動の風聞に対して、著者は、心の底では懐疑しながらも、表向きには世間に合わせて夜警に出ている旨の記述を見ると、著者の世間との接し方が伺えます。また、大地震発生の一週間前に、天災事変発生を予見していたことも、興味深い話でした。
天災などにより壊滅的被害を受けた街並みは、見た目だけは甦る。天災前よりさらに発展した街並みになることもあるだろう。しかし本当に大事なのは、そこに住む人の心の復興である。