1937年、日中戦争勃発からまだ数ヶ月の頃の、寂れた村のある親子の話だが、作者の投影と見て間違いないだろう。 戦争の暗い影がすでに空を覆い、父親は半年も生と死について考えている。抑うつ状態と言ってよいだろう父に対し子どもはその死臭を感じ取り、なんとなく余所余所しいところがある。それでも、暗雲に覆い尽くされた父親の手を娘が引っ張るとき、父親の頭に火花が散る。生命の光を確かに感じ取ってもしかし、それは一瞬で、父親の生命力を再び駆動する力足り得ない。 ただ暗い話である。戦争の前には、子どもという存在でさえ希望足り得ない。これが開戦して一年も経たないころなのだから、終戦までにどれほどの悲劇があったかは、考えたくないほどだ。小説などには何の力も無い…。
貧困のなか、明日への不安をいだきながらも 子供たちへの愛情が溢れている。 父親の辛さ、不甲斐なさが 正直に つづられている。 子供の言葉や 言葉にしない行動が たくましかったり、切なかったりします。