川喜 芥川が 伊香保温泉で 偶然 隣り合わせの座敷に 立派な紳士と 同宿となり その温泉好きの紳士と 六度も 一緒に 湯に入り あげくの はてに 湯当たりで ふらふらしながら こともあろうに 帰京の 交通費が 足りなくなり 鉄道駅で 紳士から 一円二十銭借りたという 作者自身が なにかと 思い出す 旅の 印象話である。かの紳士は 一人乗りの 小さな自動車を 製造する 野望を 持っていたようで 学生である 芥川達に 貸すかねなど 苦でもなかったろう。もし 紳士から 金を 借りられなかったら 竜之介は 温泉宿で お詫びに 宿の 三助として 湯舟の掃除でも していたかもしれないと 感じた。