大菩薩峠
だいぼさつとうげ
11 駒井能登守の巻
11 こまいのとのかみのまき分量:約149分
書き出し:一甲府の神尾主膳《かみおしゅぜん》の邸へ来客があって或る夜の話、「神尾殿、江戸からお客が見えるそうだがまだ到着しませぬか」「女連《おんなづれ》のことだから、まだ四五日はかかるだろう」「なにしろ有名な難路でござるから、上野原あたりまで迎えの者をやってはいかがでござるな」「それには及ぶまい、関所の方へ会釈《えしゃく》のあるように話をしておいたから、まあ道中の心配はあるまいと思う」「関所の役人が心得てい...