「青草」の感想
青草
あおくさ
初出:「文芸時代」1924(大正13)年12月

十一谷義三郎

分量:約18
書き出し:一杉兄弟は支配人の娘の歌津子とほとんど同じ一つの揺籃の中で育った。彼らが歌津子の母親の乳房を見て甘い微《かすか》な戦慄を覚えたこともある。歌津子が彼らの父の大きな手で真紅《まっか》な帽子を被《かぶ》せられて、誇らしさとよろこびに夢中になったこともある。それから、細い色糸が、彼ら三人の手から手へ、唄に合せて、幾度、美しい幻影を織ったことだろう。弟の手がそっとうしろから彼女の清い眉の上を蔽うたこともあ...
更新日: 2024/04/09
19双之川喜41さんの感想

 幼い 兄弟と 女の子は 同じように 慈(いつく)しまれて 成長していった。ある日 兄は 木登り遊びの際に 枝から 転がり落ち 片目の 視力を 失ってしまう。兄は その後 結婚して 子供を 授かるかもしれない頃 私設の 実験室で 蜘蛛の視力を ことさらに 傷つけて 自分の 視力の不自由は 遺伝しないことを 動物実験で 弟に 確かめて見せる。心理描写は 微に入り細をうがち 優れた 完成度の高い 作品と 感じた。

更新日: 2023/11/02
阿波のケンさんさんの感想

兄と弟と女の子、兄と女の子はお互いに惹かれ合っている。兄はふとした事から片目を失う。しかし互いの思いは変わらない。弟は兄も女の子も好きだが疎外感から歪んだ感情をどうする事もできない。鋭い描写にドキリとする。