「病院の窓」の感想
病院の窓
びょういんのまど

石川啄木

分量:約90
書き出し:野村良吉は平日《いつも》より少し早目に外交から歸つた。二月の中旬過の、珍らしく寒さの緩《ゆる》んだ日で、街々の雪がザクザク融けかかつて來たから、指先に穴のあいた足袋が氣持惡く濡れて居た。事務室に入つて、受付の廣田に聞くと、同じ外勤の上島も長野も未だ歸つて來ないと云ふ。時計は一時十六分を示して居た。暫時《しばらく》其處の煖爐《ストーブ》にあたつて、濡れた足袋を赤くなつて燃えて居る煖爐に自暴《やけ》に...