「天鵞絨」の感想
天鵞絨
びろうど

石川啄木

分量:約94
書き出し:一理髮師《とこや》の源助さんが四年振で來たといふ噂が、何か重大な事件でも起つた樣に、口から口に傳へられて、其午後のうちに村中に響き渡つた。村といつても狹いもの。盛岡から青森へ、北上川に縺《もつ》れて逶※《うねうね》と北に走つた、坦々たる其一等道路(と村人が呼ぶ)の、五六町並木の松が斷絶《とだ》えて、兩側から傾き合つた茅葺勝の家並の數が、唯九十何戸しか無いのである。村役場と駐在所が中央《なか》程に向...