村井敏邦『民衆から見た罪と罰−民間学としての刑事法学の試み』(花伝社、2005年刊)から導かれ一読。ネット社会においてはかつてなく正義論も喧しいが、ある行為が裁判制度の下で如何に裁かれうるか云々の前に、弁護士や裁判官の「業病」とされる心理的葛藤に光を当て、我々が日常的にあらゆる職種において晒される葛藤(conflicts)の有様を告白するような、人間ゆえの我が身可愛さ、翻って真実の前にした裏切り=畜生道を端的に表現した「文芸」作品となっている。今に十分通ずる権力の犯罪について考える資料として読まれるべき。コロナ禍にあって先の見えない中で、日本だけではなく海外にもある正負を問わない同調圧力、国益と個人的利益、社会的利益のいびつなベクトルを如何に切りさばけるか、或いは未曾有の福島原発事故の処理問題を始め、各地の再稼働問題における裁判所の審判・裁定の正当性に敷衍される問題でもある。終わり。