凍った闇の中での病魔に襲われた人間の描写がすごい。冬の蝿の出だしと終わり方も切ない。
そこは 谷が 両側に 迫っているので 日照時間が 極端に短い。 療養に来た 旅館の一室にも 季節はずれの 蝿はやってくる。牛乳瓶に嵌まった 蝿は 男が 「もう落ちる時分だ」と思う頃 蝿も「ああ、もう落ちそうだ」と動かなくなる。なんとも ユーモアのある 表現だけに はかばかしい 回復を 見せない 病状に対する 苛立ちが 余計 胸に迫ると 感じた。
この方の風景描写は、感情をひどく揺さぶられます。 鬱々としながらも、わずかな生きる希望や意味を見出したいともがく深層心理は、今の人々にも共通する、永遠の憂鬱なのかもしれません
生きているのは、「気まぐれな条件」に左右されているだけかも知れない。
不健康への回復を目指す名著