「鼻」の感想
はな
初出:「新思潮」1916(大正5)年2月

芥川竜之介

分量:約17
書き出し:禅智内供《ぜんちないぐ》の鼻と云えば、池《いけ》の尾《お》で知らない者はない。長さは五六寸あって上唇《うわくちびる》の上から顋《あご》の下まで下っている。形は元も先も同じように太い。云わば細長い腸詰《ちょうづ》めのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下っているのである。五十歳を越えた内供は、沙弥《しゃみ》の昔から、内道場供奉《ないどうじょうぐぶ》の職に陞《のぼ》った今日《こんにち》まで、内心では...
更新日: 2023/11/30
1e8fb27bb886さんの感想

 自分の鼻に対して、何か実害が出ているから嫌なのではない。ただ、己の自尊心を傷つけられてしまうのが嫌だという、内供の気持ちに、私は強く共感した。社会生活に支障をきたすかということを気にするのではない。ただ、自尊心が、このデリケイトな気持ちが壊れてしまうことが怖いのだ。  だから、きっと私も内供も、もし人に笑われないのであれば、鼻の長さなどはどうだって良いのだ。  だからこそ、思う。内供は俗でないから幸せなのではない。むしろ、足りないのだ。修験者にでもならなければ、その気持ちは満たされないのだ。  私もそうだ。決して、決して人に笑われたくないのだ。だからこそ、どんなに惨めな身分になろうが、人が笑ってさえいなければよいのだ。  ああ、でも本当は、本当は内供も私も、鼻のことなど気にせずに、むしろ笑いの種になることを歓びとして、会話ができれば、それが一番であったろうに。

更新日: 2023/06/08
8a7902a5726bさんの感想

今でいう二重整形みたいなもんかしら。 人間あるあるでしたね。

更新日: 2023/06/07
381c44503655さんの感想

他人の不幸あるあるですね。 いつの時代にもあるんですね。

更新日: 2023/05/26
dab53cebc5d8さんの感想

可哀想というかこちらの何かしらのコンプレックスや自尊心の弱いところも擽られて苦い 中童子は誰か教育した方がいいが、こういう存在がいるのも事実 秋の朝の描写が綺麗なのは流石なのか この後はどうなったのかしらね この話の主眼は、①コンプレックスに苦しむ内面とそれすら滑稽になってしまう様子なのか、②そんな様子を愛するor普遍性を作品として語るところなのか、③自分の特徴が戻って安心するところなのか、④人間がもつ傍観者の利己主義の習性なのか ④かな、、、 なんでこんなに読んでてちょっと不愉快な作品が有名なのかと思ったが自分もこれだけ感想を書きたくなるという点が名作になっている理由なのかな

更新日: 2023/05/20
7ae8e26fade4さんの感想

何度読んでも不思議な感覚を覚える。

更新日: 2023/05/07
869171b0fb8fさんの感想

シュール。鼻のサイズ戻って結局なぜ笑われてたのか不明瞭な所も良い。

更新日: 2023/05/05
00c972349950さんの感想

自分の鼻に自信が持てて良かった。

更新日: 2023/02/17
cbeb8d424306さんの感想

人にはそれぞれ一生背負っていくものがある。自分の意思では動かせない事もある。とてつもない悲しみでも付き合うしかない。辛くても光を見付けることができる。天命を尽くすにつきる。人の悩みをもて遊んでは値打ちがさがる。そんなことを思いました。

更新日: 2022/07/13
06e8450c83baさんの感想

己のコンプレックスを解消してもまた別の悩みが発生してしまう。 人の悩みは尽きることはないということがあらわれている作品だなと感じた。

更新日: 2022/04/08
070120b06fb3さんの感想

芋粥しかり、鼻しかり、「欲望との付き合い方のすすめ」が根底にある作品はやはり面白いと感じた。 多分著者的には、「人生の最初から最後までを貫くような欲望というのは、叶うべきものじゃないんだよ」という感じなんだろう…違うかもだけど。

更新日: 2022/03/29
d89be5f2500fさんの感想

読了(2022/03/30 03:30:09) 内供に本当に必要だったもの ×理想の鼻 〇他者評価を気にせずありのままの鼻を受け入れられるだけの自尊心 実際は難しい

更新日: 2021/09/01
6569970fb1dcさんの感想

鼻の形状をせっかく変えたのに、かえって人に嘲笑される。 元々禿頭だった御仁が、かつらを使い始め、かえってみっともなく感じさせるのと、同じであろう。 鼻の行く末が気になり、一気に読み終えた。

更新日: 2021/08/08
3d7404720b8bさんの感想

本当に、鼻、見たい、

更新日: 2021/03/02
32c7ecf9b568さんの感想

まぁたしかにコンプレックスとチャームポイントは裏腹だったりするよな。 しかしこの図式は整形手術万能の時代でも通用するのかな? 最近、ホクロを消したタレントさんが言ってたセリフを思い出す、チャームポイントは自分で決めたい、と。 作者がもし現代に生きていたら、果たしてどんな作品を書いたか。こう単純な展開にはならないのではないか。 あのタレントがホクロが消えたことで仕事が減ってしまい、消したことを後悔してるときにまたホクロができてきて安堵するなんて展開ではつまらないな。むしろホクロのない顔で初めて仕事の困難さを知り、そこから本当にタレントとしての仕事のやりがいに目覚めるという方が読んでいて面白いと思う。 ま、これは古典として楽しめるのですがね。

更新日: 2021/01/19
7fcbb497caeeさんの感想

「不幸な人を見ることが人の娯楽である」という皮肉が感じられる作品。

更新日: 2020/12/02
19双之川喜41さんの感想

 世評を気にする事は よくあること。 禿げ頭に 毛が生えたら こんな気持ちには ならんでしょう。 達観を 会得した筈の僧にして この騒ぎは わからんもんですなと感じた。

更新日: 2020/09/11
40f9758448fdさんの感想

私達は、世間の評価を気にし過ぎなのかもしれない。 主人公は、世間の評価から劣等感を感じていたが、逆に、周りが褒め称えれば誇らしい物と思えていたのではないか‥価値基準なんて有りはしないのか、これまで抱え込んでいた悩みを考えるだけバカバカしいと感じた。

更新日: 2020/05/09
4599cd07b49aさんの感想

人間に誰しも内在する劣等感というものを「鼻」という比喩に例えて見事に表現している。他人からすれば取るに足らないことも本人にとっては深刻に感じられることも実に多い。こうした人間の悲しい性とその滑稽さは、時代を超えて普遍的なものであり、色褪せることのない真理である。こうしたさり気ない日常を通して普遍的真理を伝える芥川の創作手法は、やはり見事である。

更新日: 2020/04/20
c2d745c0e62bさんの感想

コンプレックスも含めて、その人自身ということか。 コンプレックスがなくなると、実はそれがいい影響も与えていた、ということに気づくのかもしれない。 主人公は鼻が長いことで、人から顔を覚えてもらい安かったのかもしれない。そうじゃないと、噂がそんなに早く、広く広がることはないように思う。

更新日: 2020/04/15
07859be9c7dbさんの感想

軽妙の極み