画家志望の華族のボンボン(しかも庶子)が、モデルになってくれた「平民の娘」に惚れて、跡継ぎのプレッシャーを掛けてくる父に反発して、彼女の家に転がり込む。 待乳山聖天そばの下町が舞台。前半では主人公・周三の悩みや焦りを克明に描写したのに対し、後半はガラリと風景が変わり、「平民の娘」お房母娘のペースに巻き込まれ、彼女たちとの生活に馴染んでいく様子が描かれる。 生活力が薄い周三がこれからどうなるかまでは書かれてないが、自分に似ていると感情移入する読者も居そうだし、この作者とこの作品、令和の現在に比べて評価する価値ありと思ったな。