「平民の娘」の感想
平民の娘
へいみんのむすめ
初出:「文芸倶楽部」1907(明治40)年8月1日

三島霜川

分量:約115
書き出し:一此《こ》の日《ひ》も周三《しうざう》は、畫架《ぐわか》に向《むか》ツて、何《どう》やらボンヤリ考込《かんがへこ》むでゐた。モデルに使《つか》ツてゐる彼《かれ》の所謂《いわゆる》『平民《へいみん》の娘《むすめ》』は、小《こ》一|時間《じかん》も前《まへ》に歸《かへ》ツて行《い》ツたといふに、周三は尚《ま》だ畫架の前を動《うご》かずに考へてゐる。何《なに》を考へてゐたかといふと、甚《はなは》だ漠然《...
更新日: 2025/02/27
decc031a3fabさんの感想

画家志望の華族のボンボン(しかも庶子)が、モデルになってくれた「平民の娘」に惚れて、跡継ぎのプレッシャーを掛けてくる父に反発して、彼女の家に転がり込む。 待乳山聖天そばの下町が舞台。前半では主人公・周三の悩みや焦りを克明に描写したのに対し、後半はガラリと風景が変わり、「平民の娘」お房母娘のペースに巻き込まれ、彼女たちとの生活に馴染んでいく様子が描かれる。 生活力が薄い周三がこれからどうなるかまでは書かれてないが、自分に似ていると感情移入する読者も居そうだし、この作者とこの作品、令和の現在に比べて評価する価値ありと思ったな。