世界怪談名作集
せかいかいだんめいさくしゅう
06 信号手
06 しんごうしゅ分量:約33分
書き出し:「おぅい、下にいる人!」わたしがこう呼んだ声を聞いたとき、信号手は短い棒に巻いた旗を持ったままで、あたかも信号所の小屋の前に立っていた。この土地の勝手を知っていれば、この声のきこえた方角を聞き誤まりそうにも思えないのであるが、彼は自分の頭のすぐ上の嶮《けわ》しい断崖の上に立っている私を見あげもせずに、あたりを見まわして更に線路の上を見おろしていた。その振り向いた様子が、どういう訳《わけ》であるか知...