「静物」の感想
静物
せいぶつ
初出:「東京朝日新聞」1922(大正11)年11月

十一谷義三郎

分量:約36
書き出し:一家を持つて間のない道助夫妻が何かしら退屈を感じ出して、小犬でも飼つて見たらなどと考へてる頃だつた、遠野がお祝ひにと云つて喙《くちばし》の紅い小鳥を使ひの者に持たせて寄来《よこ》してくれた。道助はその籠を縁先に吊しながら、此の友人のことをまだ一度も妻に話してなかつたのを思ひ出した。「古くからの親友なんだ、好い人だよ。」と彼は妻に云つた。「では一度お招《よ》びしたらどう。」と彼女が答へた。道助はすぐ...
更新日: 2024/05/01
19双之川喜41さんの感想

 この作品は 筋立てだけに 主力がある 小説という訳では ないけど 夫の友人である 画家が 主人公(道助)の妻を 描きたがるので やむなく 人物画の作成を 依頼する。道助は 画家のモデルから 偶然出合った折りに 彼女の 自宅に 寄っていくように 誘われたりするけど それを 断り 「意気地なし」と 罵倒される。人物画と 静物画では 確かに 描き手の 心の置き所は 微妙に 異なるのは 有り得るだろう。妻が 泣き伏すの 辺りは 私は ない方が 余韻が 残るかもしれないと 感じた。ともあれ 心理描写に 巧みなものが 光った。