なかなか趣きのある作品だと思いました。 檸檬1つあるだけで沈んでた心が晴れやかになるのもちょっと面白いと思いました。
憂鬱な気分が、ある小さなきっかけで良い気分に変わることがよくある。そのきっかけがあまりにも些細なことで、自分自身の単純さに驚く。
心がすさむと、みすぼらしいものに美を感じるようになった。それでは単純に美しい檸檬に牽かれたのは何故か。 現実逃避で終わる作品。それでもその重々しい現実に打ち勝った一夜の出来事は痛快で、こっちまでつい嬉しくなってしまう。 果物の色彩や形状の美しさを、華やかな美しい音楽が固まったようだと例えたのが良かった。きらびやかな果物たちが並んでいる画が目に浮かんできた。
肺を病んだ主人公の憂鬱がお気に入りの1個のレモンで薄れていく。本屋丸善に置き去りにするレモンはそこを爆破つまり自身の陰鬱を爆破するとの隠喩か。
高校の授業で読んだのが初めてで、その時、憂鬱な気持ちが抜ける清涼感を感じ、とても気に入ったことを思い出して再読してみた。やっぱり好きだ。
若い結核患者さんの一つの幻想作品か!
本の色彩を 積み上げて 袂(たもと)から出した檸檬を置く。 カーンとさえた 檸檬の色は 本を吸収したようにも見える。 さらに 檸檬の爆弾に 見立てて 場を立ち去り 画本に活をいれてみるような 心持ちになる。 柑橘の香気が ゆらめき昇るようにも感じた。
不吉な塊…を拭い去るための現実逃避を… そして檸檬に出会う 俺も檸檬に出逢いたい笑
今まで読んでいなかった。 ざっとでしか読まなかったけれど、圧倒的なビジュアルや匂いを感じられて、梶井基次郎が現代に生まれ、映像作家だったら凄いものを作れそうで、又、小説家なら今の風景の美をキッチリ写実してくれそうである。
この物語の主人公は、芸術で心を満たそうとしていた。そこでであったのが檸檬であった。檸檬のすべてが好んで、好きだった絵画を檸檬として、新しい芸術にしたのだ。 そこがすごいと思った。
一個の檸檬が、それまで虚無だった主人公の心を変えていく。不思議な話であり、色彩の綺麗なお話でした。
体に熱があるせいか、憂鬱な心の繊細な動きを新鮮な筆致で、表現している。心が高揚したり、沈んだり、妄想したり、そうした中に突然、檸檬が投げ込まれ、一気に爆発するようにエンディングを迎える。(周五)
この陰鬱と高揚を行ったり来たりする落ち着きのない気持ち。こういう時期には誰もが陥ったことがあるのではないだろうか。 読んでいると私までその感情に引き込まれるよう。高揚しているときの突飛な考えには、少しクスッとさせられた。
散文のような詩的で不思議な作品。不吉な魂にとりつかれ、お気に入りの果実店で檸檬を手にして…という出来事としてはとてもシンプルなのに、心理描写がとても繊細で引き込まれる。
派手な展開は何もないし、明るい気分になれるような作品ではないが、ふと心が疲れた時に寄り添ってくれる。
読みやすくて、面白かったです。
音のリズム、檸檬の描写の軽やかなこと。林檎を愛する者達とは画一飛び出んとするおどけた少年のような書き方が気に入りました。
興味深い、話だった。学生のとき、檸檬は読んだことがなかったため、今回、読めてよかった。何度も何度も読める、意外と短いので、ちょっと一息つきたい時に読むのがおすすめ。
「不吉な魂」(焦燥、嫌悪、憂鬱) →闇を好む(裏通り、夜) 「檸檬」(薬、爆弾) →束の間の幸福、現実逃避 「丸善」(世間体) 昔裕福→今貧乏 →破壊
「あのびいどろの味ほど幽かな涼しい味があるものか」 この一文から感ぜられる舌先への涼しい刺激が大好きです。梶井基次郎の列挙する少し頽廃的なもの、その表現がしっかりと理解できる物語。