やるせない物語ではあるけれど、そこにある人の情は何十年とたった今でも感じとれる妙
作者が何を言いたかったのか理解できなかった。
とんでもないおんなを見つけてしまった。
怪作、そして傑作
与える愛の物語でありロマンスポルノだと思う。 誰かの欠けているパーツになりたいと思ってしまう人は、現実に居る。 そのためならどんなことでもしてしまう人も。 アーティストとしての耳男に足りていないものがなんなのかわかった上で、夜長姫は自分がその最後のパーツになりたいと願ったのだと思う。 それは途轍もない傲慢であるし、間違いなく姫の一方的な思い込みでは無かったと言い切ることも恐らくできないだろう。 一方的に、暴力的に、上位存在から送り付けられ与えられるギフト。これはそういう極めてロマンチックなお話だと私は思う。
耳男は純粋な人だ。 夜長姫は冷徹で残酷。 その二人のはなし。
手持ちの それなりの 器量(きりょう)に あわせて もっている 引出しには 収めきれないと 感じてしまう人が 多いと思う。 取り敢えず 姫は 恍惚(こうこつ)の絶頂の向こう側での 死を願ったわけを 延々と 考えてみようと思った。
センスや技巧が、あまりにもないのだけれど、ほんとうに言いたいことが言語を絶しているのだから、そう言われるのは、あたりまえのことと思う。坂口安吾の存在感に、彼の諸作品のどれよりも惹かれる
描写が繊細で、夜長姫は美しかった。 本の世界から出るのが名残惜しくかんじる。 ここからネタバレ含むので注意 夜長姫の行動は其処に一切の邪気も含まれて居らず、ただただ好奇心に従い、そして猫のように殺された。 耳男は…耳男も同じく哀れな人物だったのだろう。
シネマ歌舞伎「桜の森の満開の下」にこのお話が含まれています。最後の夜長姫のセリフがこわいけど、そうなのかもしれないと思います。
この話はなんだろう、というのが偽らざる第一印象である。 命を賭けるものに対する姿勢をヒメが説いた、というのでは、いささか不足すぎはしまいかと思う。 ただ、そこにあるのは、いつの間にか心奪われる狂気の世界だ。
読み進めるほどに胃をかき回されるような不快感や不気味さが増していった。しかしどこか美しさを感じるのが恐ろしい。快晴の気持ち良い朝に読んだはずなのに、読んでいる間は雨降りのじっとりとした真夜中にいるようだった。
読んだ後に「... うん... マジかぁ... 」という こうなんとも言葉が出て来ない感覚に襲われる御話でした。難しい漢字などもなく 文字量もそこまで多くないので手軽に読めますが、明るいお話が好みの方は向かないかも知れません(´・ω・`)bグッ
これを書くなら、姫はもっと高貴な出でなければならなかった。田舎村のたまたま産まれた姫扱いの者では、作者の書きたいものを書けていない。 また耳男の凡人の暴力性は蛇などのモノによる代替ではなくて、自分の身体にも及ばなければならなかったのではないか。 そうでなければ、姫との接点、姫への周りの人々よりも一層の理解が通じてこない。 姫も耳男も描く前に説明によって存在してしまった。 蛇が揺れる青い空は最後の画としてはいい。 しかし、それが高められずに繰り出されたようで、作品としては未完、低い。
正直、難解。でも、面白い。 いろいろと感想を書こうと思えばいくらでも書けそう。長耳は凡夫ではない。技術もあれば、哲学も意地もある。よくある考えすぎる狂言回し、とも言える。しかし、姫を手にかけた時には、ほんの一瞬主人公になり、わずかばかりでも姫に同調している。 この小説の面白さ、おそろしさは姫にある。すごいキャラ。古今東西の歴史、小説にはサイコパスが沢山登場する。目的はただ人を殺すこと。読み慣れても、飽きることのないテーマだ。 姫は死や破壊を喜ぶ。そこになんらのためらいもないし、それ以外の楽しみもない。最後には己の死さへ、一つの喜びとしているようだ。そこに反省も、後悔も、懺悔も、絶望もない。ただ純粋に、死への憧憬がある。スーパーサイコパスと言ってもいい。 こわいキャラだが、他に類のない人物像だと思う。
けっして美しい話ではないですが、凄まじい力を感じます。 素晴らしい話でした。