長彦と丸彦
ながひことまるひこ
初出:「幼年倶楽部」1941(昭和16)年10月ー12月分量:約28分
書き出し:一むかし、近江《おうみ》の国、琵琶湖《びわこ》の西のほとりの堅田《かただ》に、ものもちの家がありまして、そこに、ふたりの兄弟がいました。兄はたいへん顔が長いので、堅田の顔長《かおなが》の長彦《ながひこ》といわれていましたし、弟はたいへん顔が丸いので、堅田の顔丸《かおまる》の丸彦《まるひこ》といわれていました。顔長の長彦は、体がやせて細く、少しも力がありませんでしたが、たいそう知恵がありました。そし...