「アド・バルーン」の感想
アド・バルーン
アド・バルーン
初出:「新文学」1946(昭和21)年3月

織田作之助

分量:約73
書き出し:その時、私には六十三銭しか持ち合せがなかったのです。十銭白銅六つ一銭銅貨三つ。それだけを握って、大阪から東京まで線路伝いに歩いて行こうと思ったのでした。思えば正気の沙汰《さた》ではない。が、むこう見ずはもともと私にとっては生れつきの気性らしかったし、それに、大阪から東京まで何里あるかも判らぬその道も、文子に会いに行くのだと思えば遠い気もしなかった、……とはいうものの、せめて汽車賃の算段がついてから...
更新日: 2024/05/01
19双之川喜41さんの感想

 終戦直後なので 風船のような 浮き草生活が 当たり前の 頃だった。女が 上京して しまったので 東京まで 歩いていくことにした。やっとの思いで 東京に着き 女を 見つけると 薄気味悪がられてしまい 返りの 旅費を くれはしたけど 上げては 貰えなかった。その後は 紙芝居やなどで 命をつなぎ 喧嘩わかれした 実父の 葬儀も 済ませた頃 今では 東京で 人気歌手となり 出世した あの女の 歌声が 流れてきた。猥雑な 大阪暮らしが 饒舌体で 愉しそうに 語られていると 感じた。 

更新日: 2020/07/31
496b7f29770aさんの感想

大阪から東京まで歩く十吉がどうなるのかと終始心配になったが、最終的には到着し、そして文子に疎まれる……。隣県なら兎も角、文子が気味わるくなるのも道理である。また文子から貰った旅費で大阪へ戻った際には、もう死ぬしかないなぁと十吉と同じ絶望を味わったのだが、ふとした拍子に秋山さんと出会い、小さな目標(貯金)を達成する為にコツコツ努力しながら生きる姿に、親近感が湧いた。父親に関しても、取っ替え引っ替え再婚をするが、なんとなく憎めないお人であり、その人の死は、なんだかじんわりと胸にくるものがあった。読了爽やか。転がるように生きて十年とは、人生はあっという間だと感じる。老妻孝行しながら、十吉が秋山さんと再び会える日を心待にしている自分がいる。

更新日: 2018/01/14
5a0cb9575e26さんの感想

「です。ます。」調と「だ。である。」調が混在して綴られ、その違和感が逆に親近感や臨場感を覚えさせる。読後ほっこりさせられた。策士オダサクらしい。

更新日: 2015/07/30
7f4a0e1743b9さんの感想

放浪癖で仕事も点々結末が意外でした。