虹猫の話
にじねこのはなし
初出:「赤い鳥」1927(昭和2)年1月分量:約10分
書き出し:いつの頃《ころ》か、あるところに一|疋《ぴき》の猫《ねこ》がゐました。この猫はあたりまへの猫とはちがつた猫で、お伽《とぎ》の国から来たものでした。お伽の国の猫は毛色がまつたく別でした。まづその鼻の色は菫《すみれ》の色をしてゐます。それに目玉はあゐ、耳朶《みみたぶ》はうす青、前足はみどり、胴体は黄《きい》、うしろ足は橙色《オレンヂ》で、尾は赤です。ですから、ちやうど、虹《にじ》のやうに七色をしたふし...