作者は実に開けっぴろげに自分や周りを描いている。恋仇のWを除いては実名と思われる。恋人との結婚は安吾以外両家の親を含めて全ての人が祝福しているが恋人の愛人Wがどうしても気にかかる。実話だけにどうしようもない。
坂口安吾は 矢田津世子 とは プラトニックラブだと言い張るので そうなんだろうけど 一時は真剣に お互い 結婚まで考えた仲なのに 屈折した 斜に構えた ややこしい愛を 持て余していたのかもしれないと感じた。
「犬のような惚れ方」という例えが良かった
確かに、実名をあげられると、nonfictionのような錯覚を覚える。 特に、中也ファンが存在するならば、 猿股一丁で大の字に床で寝ていた、 などの記述は、イメージダウンかも知れないし、逆に中也でもそんな行為をするのか!と益々ファン度が増すかも知れない。(例えば中也なら中也で良いが、当時の映像が残っていないので、教科書掲載の写真、そうあの童顔美男子のあの写真しかないので、酔っぱらって脱ぐなんて、現代サラリーマン的で全然OKだ。) 矢田世津子とW、との関係に対する嫉妬心はあるが、Wを恨んでないというので「W」なのか? 丹羽が実名での暴露本的作品に対する批判、わからんでもない。 安吾は「作者の息吹」を感じ取れと言うが、女給に対しては大胆なくせに、得恋をした女には恐怖を感じ、肉体も求められない心境は理解できない。 愛の「ある」肉体関係を否定し、寧ろ 愛の「ない」肉体関係を肯定するのか? 世津子にとってのセフレがWで、安吾にとってのセフレは不特定多数の女給ということになるのか! 安吾が世津子に肉体を求めないのはWと同格になりたくないからか? 結婚してもW不倫でしょうね? 息吹はどこにあるの?