ちかごろの酒の話
ちかごろのさけのはなし
初出:「旅 第二一巻第六号」1947(昭和22)年6月1日分量:約9分
書き出し:メチルで死人がでるやうになつたとき大井広介から手紙で、新聞でメチル死といふ記事を見るたびに、私が死んだんぢやないかと思つて読んでゐる。気をつけてくれ、といふことを書いてよこした。そのとき、大丈夫、オレより先にタケリンがやられるだらう。そしたらオレも気をつける。と何気なく書き送つたところ本当に武田麟太郎が仆《たお》れてしまつた。こいつはいけないと、心細さが身にしみたものだ。その時以来、私は銀座のルパ...