仕官を 欲しない。名利を 求めない。黙々と 習練に 励むだけ。昔から 農業の 合間に 技を 研きつづけた。この 一心不乱が 何やら 手に負えない 高みに 到達した。漏れ伝わる 評判に 血気盛んな 腕自慢が 村を 訪れるけど たたきのめされて 引き下がる。武蔵で さえも 寄食 猟官のために 諸国を 徘徊したけど この流派は 一所不動を 貫いてる。ならば この流派が 名を 遺した 秘密は 読めば 解るかも 知れない。
短いエッセイではありますが、『馬庭念流』の紹介としては、十分な長さであると思います。以前、馬庭念流の「組十本」なる組打刀を拝見しましたが、現代の剣道にはない“実戦的な”足捌きや受け打刀が印象的でした。馬庭念流は、京八流の一つである念流が源になっているかと思いますが、著者のの記述の通り、土着の民間防衛の要素を強くして改良された剣法となって、代々伝えられている為、現代に生き残ったのでしょう。
非常に簡潔で無駄がなく、表現の豊かさからか、その光景が脳裏に生き生きと再現され、書に没頭致しました。
誉めるばかりでなく、意見も忘れない安吾のユニークな随筆 時代小説も書いている彼らしい観察が面白かったです