「禅僧」の感想
禅僧
ぜんそう
初出:「作品 第七巻第三号」1936(昭和11)年3月1日

坂口安吾

分量:約24
書き出し:雪国の山奥の寒村に若い禅僧が住んでゐた。身持ちがわるく、村人の評判はいい方ではなかつた。禅僧に限らず村の知識階級は概して移住者でありすべて好色のために悪評であつた。医者がさうである。医者も禅僧とほぼ同年輩の三十四五で、隣村の医者の推薦によつて学校の研究室からいきなり山奥の雪国へやつてきたが、ぞろりとした着流しに白足袋といふ風俗で、自動車の迎へがなければ往診に応じないといふ男、その自動車は隣字の小さ...
更新日: 2023/04/27
decc031a3fabさんの感想

面白い訳では無いし題材も暗め。だが安吾はそこから人間の生きる力を描き出すことに成功した。やがてこの雪国の村にも、出稼ぎの若者たちを通じて都会の空気が入ってきて変化が起こっていく未来を知っていれば、こうした古い村のことは昔の事と目を背けがちだ。 令和の現在はまだ郷愁を誘うネタ話になっているが、おそらく確実に消える類いのものだろう。そんななかにも当の禅僧のようにカッコ悪く恥を晒しながらも、朝になると起き上がっていく者が一人でもどこかに居たというのが、何か未来に繋がっている感じがしたな。