一家言を排す
いっかげんをはいす
初出:「新潟新聞 第一九九六一号〈夕刊〉」1936(昭和11)年11月20日付(19日発行)分量:約3分
書き出し:私は一家言といふものを好まない。元来一家言は論理性の欠如をその特質とする。即ち人柄とか社会的地位の優位を利用して正当な論理を圧倒し、これを逆にしていへば人柄や地位の優位に論理の役目を果させるのである。非論理が論理を圧倒するといふ微妙な人間関係は古来わが政治屋に珍重された処世術で、英雄豪傑の遺風であり、恰《あたか》も土佐犬がテリヤを圧倒するかの如き非理智的な動物的人関係の一つである。これは論理的訓練...