アグニの神
アグニのかみ
初出:「赤い鳥」1921(大正10)年1月、2月分量:約22分
書き出し:一支那《シナ》の上海《シャンハイ》の或《ある》町です。昼でも薄暗い或家の二階に、人相の悪い印度《インド》人の婆さんが一人、商人らしい一人の亜米利加《アメリカ》人と何か頻《しきり》に話し合っていました。「実は今度もお婆さんに、占いを頼みに来たのだがね、——」亜米利加人はそう言いながら、新しい巻煙草《まきたばこ》へ火をつけました。「占いですか?占いは当分見ないことにしましたよ」婆さんは嘲《あざけ》るよ...